イラン経済危機の深化:リアル史上最安値とインフレ68%、制裁下の見通し
2026.08.31
イランの経済危機の現状と今後の見通し
イランは現在、深刻な経済危機に直面している。通貨リアルの急落が進行中であり、国際通貨基金(IMF)は2026年の経済成長率をマイナス6.1%、インフレ率を68.9%と予測している。更に、2025年10月時点の世界銀行の予測でも、イランの経済は2025年・2026年ともに縮小するとされている。
2026年8月24日、米国が新たな制裁を発表したことを受け、リアルは対ドルで史上最安値を更新し、実勢レートは1ドル=200万リアルを超えた。この期間に、リアルのパラレル市場での価値は2022年以降で3分の2失われており、経済状況の悪化が顕著である。
インフレと生活コストの急騰
インフレの影響を受け、イラン国民の生活は厳しさを増している。米国との軍事衝突前と比べ、コメの価格は60%上昇、牛肉は150%上昇した。2025年の食品インフレ率は70%を超えた。公式の最低月額賃金は1億6625万5000リアル(約85ユーロ相当)であるが、最低限の生活に必要な物資を賄う「生活バスケット」の月額コストは約4億5000万リアル(約225ユーロ相当)と推定されており、約63%の不足が生じている。さらに、医薬品不足も深刻化している。
対外関係と制裁の影響
イランの経済状況は外部要因とも密接に関連している。2026年2月28日、米国とイスラエルによるイラン攻撃が行われ、これに続き、最高指導者アリ・ハメネイ師の死亡が報じられた。これらの出来事はイランの社会不安を高め、経済に対する国民の信頼感を低下させた。
その後、6月14〜15日に米国とイランが覚書(MOU)に合意したが、内容はホルムズ海峡の再開や米軍による封鎖解除などであり、核問題に関しては60日間の追加交渉に先送りされた。2025年9月27日には国連による制裁の「スナップバック」が発動され、これはイランの輸出量に影響を及ぼすとされている。
イランの原油・コンデンセートの輸出量は2026年初め時点で日量165万〜180万バレルであり、多くは「シャドー船団」を介して中国の独立系精製業者に送られている。しかし、米国による二次制裁が強化され、イラン産原油の価値は大幅に下落した。ブレント原油に対する値引き幅は、2023年の1バレルあたり8ドルから2026年には14〜17ドルへと拡大した。イランの財政が均衡する原油価格は1バレル124ドル程度であるのに対し、実際の実現価格は56ドル程度にとどまっており、財政赤字が深刻化している。
UAEとの関係悪化
アラブ首長国連邦(UAE)がイランとの貿易・金融取引を停止したことも、イランに大きな打撃を与えた。ドバイ経由で長年依存してきた石油収入や資金移転のルートが断たれ、イラン経済はさらに困窮している。
今後の経済見通し
今後の見通しについては、石油市場全体では2026年第3四半期まで供給不足が続く見込みであるが、第4四半期以降は供給過剰に転じる可能性もある。ただし、各国が取り崩した石油備蓄の買い戻しが一部を吸収し、価格下落圧力を和らげる可能性があるため、動向には注意が必要である。
制裁の履行が厳格化されれば原油収入がさらに減少し、通貨安やインフレが一段と進行する可能性が高い。一方で、6月の米イラン覚書が今後の交渉進展につながるようなことがあれば、段階的な制裁緩和が期待され、経済状態の改善に向かう余地も残されている。
今後数年の間、イラン経済の回復は容易ではないが、状況次第では改善する可能性もあるため、引き続き注意深く状況を見守る必要がある。